2025.03.07
2024年11月25日(月)~12月25日(水)まで、みなとみらい東急スクエアにて、「Bleu Noël-青い海のクリスマス-」が開催されました。
神奈川大学の学生たちがゼミの活動を通じて考えた、みなとみらいの魅力が再発見できるクリスマスイベントです。イベント当日の様子や学生考案企画が出来上がるまでの背景をレポートします。
ブルーのツリーに彩られた、海を感じるクリスマスイベント
イベント期間中の1カ月間、館内は青く輝くクリスマスツリーと青い海とクジラが印象的なポスターで彩られました。
12月24日(火)25日(水)の2日間は、クイーンズスクエア横浜1階のクイーンズサークルで、神奈川大学の吹奏楽部やジャズ研究所による音楽ライブや、学生主催のオーナメント作りのワークショップを実施。音楽ライブの観覧席は、多くの親子連れやご高齢の方が、演奏に耳を傾けていました。各日100組限定で11時から開始したオリジナルオーナメントを作るワークショップも、24日は16時前に、25日は14時には終了となる盛況ぶり。他にも、ハローキティの「クリスマスミニステージ」を開催。クイズやダンス、写真撮影会も行われ、たくさんのかわいらしい声でにぎわっていました。
キャンペーンの実施に関わった皆さんにお話を伺いました。まちに対する思いや今回の取り組みに参加した感想などを、これまでの経緯とともにご紹介します。
神奈川大学みなとみらいキャンパスの学生との連携
始まりは2023年の夏。
「圧倒的に観光客向けの施設が多く、新しいまちであるみなとみらい。このみなとみらいの地で、まちに暮らす皆さまと一緒に地域の魅力を見つけ、集め、発信するという(株)東急モールズデベロップメント(以下TMDと表記)が取り組む地域共創プロジェクト『FIND LOCAL』の趣旨を踏まえた取り組みで地域の魅力再発見に貢献したいが、何ができるだろうか?と考えていました」と語るのはTMDの遠藤さん。
「そんな中、みなとみらい地区の事業者が集まる懇親会があり、神奈川大学社会連携センターの方とお話しすることができました。その際、『FIND LOCAL』の取り組みに共感いただいたのが、今回の共創のきっかけです。」
神奈川大学 みなとみらいキャンパスは、2021年4月に21階建ての新キャンパスをみなとみらいに開設したばかり。しかしコロナ禍であったこともあり、
「せっかくみなとみらいにキャンパスができたのに、学生は授業が終わると歩いて横浜駅に向かってしまい、このまちに滞留していない、という課題がありました」と語るのは、今回プロジェクトを担当した、神奈川大学 社会連携センター 副センター長、国際日本学部 国際文化交流学科の島川教授。
「こんなにすてきなところなので、学生にはこのまちをもっと好きになってもらいたいし、地域の方にとっても、ここに大学があってよかったと思っていただきたい。学生が中心になってその新鮮なアイデアを生かして進めるというTMDさんからのご提案は、何か地域との連携ができないかと考えていた神奈川大学にとって、良い機会になると考えました。」
学生の学びを尊重した、9カ月間にわたる取り組みを開始!
双方の思いが一致し、2024年4月から本格的に、TMDと神奈川大学による連携が始まりました。
両者が大切にしたのは、学生の学びとなり、みなとみらいの魅力を再発見できるようなイベントを実現させること。
神奈川大学では2024年の春、島川教授、経営学部国際経営学科の行本准教授がゼミの課外授業として3年生に声をかけ、それぞれのゼミから計13名の学生が手を挙げました。
プロジェクトを進める上での運営統括として、地元の広告代理店である(株)KSアドエージェンシー(以下KSアドと表記)も参画。4月から7月までの4カ月間で計6回のディスカッションを実施し、念入りなアイデア出しと具体的な企画の立案を進めました。
序盤は、「みなとみらいのイメージ」「記憶に残るイベント」などを各々が自身の体験を基に発表・共有し、施策検討の土台となる認識のすり合わせを実施しました。その後3グループに分かれ、今回軸に据えるみなとみらいの魅力やその伝え方、イベントの中身を検討し、会場となる「みなとみらい東急スクエア」の館内やバックヤードツアーを通して、企画を具体化していきました。7月のディスカッション最終回には、みなとみらい東急スクエアの支配人などを前に、各グループがプレゼンテーションを行いました。プレゼンテーションを基に、テーマ性やイベント性など各グループの秀逸なアイデアを掛け合わせることで、「Bleu Noël-青い海のクリスマス-」という企画がまとまりました。今回のキービジュアルも、このプレゼンテーション時に提出されたラフを基に制作しました。
当初、学生たちの活動自体はディスカッションおよび企画考案で終了予定でしたが、「最後までやり切りたい!」という学生たちの強い思いから、クリスマスツリーの装飾作業への参加や学生運営によるワークショップの実施が決定。神奈川大学 みなとみらいキャンパス内にあるデジタル工作機器を備えた施設「ファブラボみなとみらい(3Dプリンターの作業場)」を活用したワークショップ用のオーナメント制作や運営計画の作成、当日の運営までを学生たちが取り組みました。
<ゼミの取り組み概要はコチラ ※イベント当日に掲載したパネルです>
アイデア満載のディスカッションを経て知った、すてきな大人との関わり
TMDの遠藤さんは、以下のように振り返ります。
「今回のような学生との連携は初めてでしたが、固まった大人の概念を押し付けるのではなく、学生の自由なアイデアを尊重することを一番に考えました。いい意味でさまざまな案が出るので、常に刺激を受けながら、手探りで進行プランを練り直しました。実現に伴うリスクなど現実的な施設運営の視点も伝えながらも、できる限り実現を目指し、『FIND LOCAL』や『商業施設のクリスマスイベント』の趣旨に沿ったイベントをつくり上げることができました。最終的には学生さんのアイデアが形になり、イベント当日の運営も主体的にやってくれました。アイデア出しからイベント当日までの過程を伴走でき、私たちにとっても大きな学びとなりました。」
ディスカッションの司会や会場づくり、モチーフの制作作業の部分でも学生と関わる機会が多かったKSアドの住石さんは以下のように語ります。
「ディスカッションのファシリテーターは、1回も無駄にできないという思いで担当しました。予期せぬことが起こっても、共に考える姿勢を大切にすると、また次にアイデアを持ってきてくれる。学生たちの真剣な姿勢や柔軟な発想には驚かされるばかり。ファブラボで作ったかわいいオーナメントなど、見ていただきたいポイントもいっぱいですし、フォトスポットでは、学生のイメージを何とか形にしたいと大工が何度も図面を書き、青いツリーとたくさんのプレゼント箱を載せた船のフォトスポットが完成しました。プロジェクト途中から、ステージ演奏担当の吹奏楽とJAZZの学生たちとの関わりもありました。みんないい子たちばかりでいろんな可能性を秘めており、つい父親目線で応援したくなります(笑)。今後もチャンスがあれば、こういったプロジェクトに関わりたいです。」
今回の主役である学生たちは、この9カ月を次のように振り返ります。
島川ゼミの石川さんは
「4月からずっと準備してきて、イベントではお客さんに楽しんでもらえて、こちらまで楽しくなりました。段階を踏みながら理想と現実を近づけていく過程は、将来社会に出てからも役立つと思いました。」
行本ゼミの原さんは
「プレゼンは偉い方たちも聞いてくださったのですが、今までそんな状況はなかったので緊張しました。実現させるためには、大人の方の意見がとても参考になりました。皆さんの仕事に対する気迫を感じ、自分もこういう大人になりたいと思いました。すてきな大人の方と関わることができました。」
島川教授によると、このように地域を盛り上げている企業があることを知って「将来商業デベロッパーに就職したい」と言ってきた学生もいたそうです。
予算(現実)を知ることで、実現に近づけられるという大きな学び
今回のプロジェクトでは、クリスマス企画全体の予算を提示し、装飾やステージイベント、ワークショップなどへの予算配分から学生に検討してもらったそうです。
「あまりなじみのない商業施設の予算やその使い方に触れ、先生からも分かりやすく説明や助言をしていただき、学生さんにとって大きな学びになったと思います」と、TMDの遠藤さん。
島川教授は、こう感想をお話しくださいました。
「今までも、こういったPBL(Project Based Learning=課題解決型学習)はありましたが、実現可能性が低いようなものが多く、あまり良い印象がありませんでした。今回のプロジェクトでは、TMDさんが予算を全て明らかにしてくれたことにとても驚きました。学生は最初『こんなに予算があるんだ!』とびっくりして、実際に作業に入ると『こんなところにもお金がかかるんだ!』と肌で感じ取ったと思います。何かをやるときコストがかかるのは当たり前。それには人件費だって含まれる。理想論だけでは実現できない、というコスト意識が芽生えたのではないでしょうか。TMDさんが裏まで見せてくれたことで、本当の学びにつながりました。今回は、参画してよかったと、心から思っています。」
学生によるワークショップの準備作業では、現場経験豊富なKSアドの住石さんによるアドバイスをもらいながら、原材料費など予算を意識して準備を進めました。
観光・ホスピタリティについて学び、お客さまの立場に立ち、いかに喜んでいただくかを追求する島川ゼミの学生と、経営的な視点を学んでいる行本ゼミの学生。双方がそれぞれの強みを生かして話し合ったことも、企画を効果的にブラッシュアップさせることができた理由かもしれません。
学生から、次のような感想を聞くことができました。
「実際の予算を教えてもらい、いろいろな制限がある中で、実現する方法を考えることは難しかったですが、とてもためになりました。みなとみらいらしさや神大らしさを出すために、一般的なクリスマスの緑と赤ではなく、ブルーをイメージカラーにしました」(石川さん)。
「作業の中で、島川ゼミのみんなからキービジュアルやモチーフの新しいアイデアが出て、自分たちとは観点が違うなと感じました。実は、神大キャンパスのモチーフはクジラなんです。神大生がいっぱいいるよ、ということを表したくて、キービジュアルにはクジラを入れてみました」(原さん)。
非日常だったみなとみらいの日常が見えた!
9カ月にわたる取り組みを終えて、学生たちはみなとみらいの魅力に触れることができたのでしょうか?そして、地域の皆さんにとってもまちの魅力の再発見につながるのでしょうか?
学生たちはこのまちについて、以下のように語ってくれました。
「地方出身の私にとって、みなとみらいはキラキラしたまちという印象が強く、きれいな街並み、すてきな場所、非日常のイメージでした。3年間大学に通って身近にはなりましたが、今回の取り組みに関わって、家族で楽しむまちというイメージが強くなりました。遊びだけでなく、暮らしにも密接につながっていて、ここが日常でもあるのだと。今の子どもたちが大人になっても、まだまだ続いていくまちであってほしいです」(石川さん)。
「みなとみらいは、小さいころから来ている大好きな場所。冬はイルミネーションのイメージが強く、何回来ても飽きない。今回プロジェクトに関わって、このまちがもっと好きになりました。これからも、みなとみらいの良いところをもっと見つけていきたいし、このまちが好き、という人が増えてほしい」(原さん)。
週末は観光に来る人が多いまちですが、「平日開催の今回は、小さいお子さんを連れたお母さんや高齢の方などが多く、音楽もゆっくり聴ける安全で良いクリスマスイベントになりました」とKSアド住石さんは語ります。このまちで日常を過ごしている人が多く来てくださったようです。
「日常を過ごすまちというと、そば屋や牛丼屋のあるまちをイメージしてしまいますが、『みなとみらい東急スクエア』にはありません。でも、ここの日常は、それらに頼らないアプローチで、そば屋や牛丼屋がないことが日常なのです。今後、子や孫世代までみなとみらいが輝き続けるには、非日常の中の日常の取り入れ方、そのひとひねりとバランスが大切になるのではないでしょうか」という島川先生のお話は、みなとみらいの未来に光を当ててくださったようでした。
今回のイベントには、“非日常のまちで過ごす、日常の暮らし”がありました。学生の力を借りて、「FIND LOCAL」のコンセプトである、“まちの魅力”が再発見できるイベントとなったのではないかと感じました。
「今後もこのような取り組みを行いたい。」
インタビューをお願いしたTMDの遠藤さん、KSアドの住石さん、そして神奈川大学の島川教授が口をそろえてこのように語ってくださったことが印象的でした。
■Bleu Noël -青い海のクリスマスー 概要……………
開催日時:2024年11月25日(月)~12月25日(水)
開催場所:みなとみらい東急スクエア館内